奥さんのウエストポーチ紛失始末

昨日午前11時過ぎのことでした。久しぶりに回転すしでも食べに行くか、と昼めしに出かけたのです。車でゆっくり走っても5分足らずのところです。時間が早かったせいか、店はがら空きでした。

うるさいくらいに世話やきの役を演じたがるホールのおばはんが、脳みそに響くほど高い声で奥さんに言いました。
「奥さん、ここにも荷物を置く棚がありますから」と、カウンターの裏の膝の奥辺りにある小さい棚に、手に持っていたウエストポーチを置くように促したのです。

自分に見えない所に荷物を置くようなことは、まずしない彼女も、私は自分の膝の上に置いてていいんだけどと言いながら、そこまで世話を焼かれては無視もできず、おばはんのお勧めどおりにしたのでした。

このすし屋さん、結構いいネタを使ってるのです。奥さんが７皿、私は９皿食べて大満足。お代は1800円と少々。安くて美味い。言うことなし。

今朝９時半。少し離れた隣町にある洋品店へ行きたい、と言うので、出かけようとしたところ、顔色を変えた奥さんが、
「あんた、大変！　ウエストポーチがないの。昨日すし屋さんに置いてきたみたい。あのおばさん、要らぬ世話をやいてくれるから、こんなことになるんだわ。だから私はいつも膝の上においてるのに」

急遽行き先を変更して、回転すし屋さんへ向かう。店に駆け込んだ奥さんは、５分後がっくりした表情で出てくる。
「見かけなかったって言うのよ。どんな人があんなもの持って行くのかね。全くどうしようもない世の中だわねえ。がっかりしたわ。今年は正月早々に怪我はするし、あまりいい年ではないみたいで、嫌になっちゃうな～」

「何を入れてたんだ？　お金の他に大事なものが入っていたのかね」
「特にたいした物は入っていなかったんだけど、お金は4000円あまり。それとどうでもいいようなカードや券が数枚。高速バスの乗車券も２枚あったかな。銀行関係のものは違うバッグに入れてるから。使い慣れた財布がなくなって一番残念だわ」
「約8000円か。大金だで。カードや券だって必要なものばかりなんだから、再発行してもらわないとなあ。財布も買わなきゃ。大変だ～。あのホールのおばはんも無責任な女やなあ。ホールの担当なら、客が帰ったらすぐにカウンターを片付けるんだろ。そん時には忘れ物の有る無しも確認しなくちゃなあ」　誰が悪者にされるか分からない。

しようがないから、諦めることにして、隣町へ向かう。が、こんなことの後では二人とも気が重い。買い物などしている雰囲気ではないのだ。買い物は中止して帰路につく。
「おい、やっぱり警察に届けておくべきじゃないかねえ。出てくるか来ないかは別としてもな」
「私もそう思う。悪いけど警察へ連れて行って」　届けは簡単に終わる。

「妹に電話しとくわ。慰めてくれるかも知れないから、、、、。あっ、携帯も、、、、」

すぐ、警察に電話して携帯の件を告げ、au にも契約停止の手続きをする。
奥さんは可哀相なくらいしょげかえっている。

夕方、洗濯物を取り入れていた彼女が叫んだ、
「あんた！　ごめん。ここにあったわ。こんなところに」
玄関の物陰に隠れていたのだった。色々あったけど、見つかってよかった。

これで当分の間、あのすし屋さんには行かれない。
こんな事情なので、安くて美味いすしの写真が撮れなくて大変残念。

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